シリーズ3回目の今回は、「知的障害」と「学習障害(LD)」を取り上げます。
それぞれの障害の定義とその背景に何があるかについて専門の先生にお話を伺いました。
知的障害と 学習障害(LD)を知ろう
知的機能が全体的に低いか、
特定分野が苦手かを区別する
知的障害は、全体的に知的機能が低いレベル(知能指数=IQ70以下)に留まっている状態を指します。食事や衣服の着脱、簡単な意思疎通など日常生活に問題がない人から、日常生活に手助けが必要な人まで、軽度・中度・重度と人によって程度に違いがありますが、知的発達の遅れという側面から見た、ひとつの発達障害といえます。知的障害と認定されると療育手帳が交付されて支援を受けることが可能になり、障害年金や特別障害者手当などが受けられる場合があります。幼い時には判断しにくいのですが、適切な支援を受けるためにも違和感があったら専門機関に相談しましょう。
一方、学習障害(LD)は、全般的な知的発達に問題はないものの、特定の領域を学習することが難しい、特に学校に通うようになってから表面化する障害です。医学的に学習障害と診断することはあまりなく、特定のできない領域があるために学校でみんなと同じ授業を受けるのが難しい子どもに対して使われるようになりました。
学習障害の困難さの理由を辿っていくと、実はその陰に自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)の傾向が隠れていることが少なくありません。ASDやADHDの傾向があれば、学習面で難しさが生じるからです。
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学習障害の背景はさまざま
成功体験や達成感が重要
たとえば学習障害の中には算数障害といわれるものがあります。簡単な計算はできるのに、記号のある抽象的な問題はできない場合、物事の抽象化や概念化が苦手な可能性があります。図形問題で必要な情報を取り出せないなら、情報の取捨選択が苦手なことも考えられます。PC上のゲームでなら計算できるのに紙に書かせた途端できなくなるなら、興味のあること以外に集中できない特性が隠れている場合もあります。
さらに読字障害の場合、言語発達全体が遅れていることもあれば、単語の区切り方が分からない、文字を取り入れるのに時間がかかる可能性などがあり、教室で不快な体験をするとさらに読まなくなる悪循環になりがちです。文字を書けない場合も同様で、不器用さから文字を早く書けない子もいれば、気の散りやすさから集中して文字を書けない子もいます。
このようにLDは、それぞれのできない背景が千差万別ですが、どんなケースでも本人に成功体験を積んでもらうことが大切です。対処法としては、本人のモチベーションをどう引き出すかが要となります。たとえば最近「うんこドリル」という漢字ドリルがヒットしましたが、あれも興味の持続を図ろうとするひとつの例です。ほかにもルールを学ぶのが得意なら、作文の型や算数の公式を覚えることで自信をつけさせる方法もあります。できたかどうかに焦点を当てるより、本人に達成感があるかどうかを重視するのがポイントになります。
LDの娘が教室に入るのを嫌がる。
どうするべき?
LDの子が集団の中で過ごすとき、莫大なエネルギーを使います。親の期待に応えたいと思いながらすでに精一杯頑張っている状態で、ついに限界になって教室に入りたくない、行きたくないと言いだしがちなのです。そんなときは、まず元気になってもらうために休ませるのもひとつの手。本人にとって、午後からなら行ける、支援クラスなら行きたい、保健室なら行くというならそれでもいい。発達障害の専門医の意見を学校側に伝える方法もありますね。難しいかもしれませんが、親が焦らずに子どもの成長を待つことがとても大切で、次々に課題を与え過ぎないようにする配慮も必要です。まずは親が孤軍奮闘にならないように、担任の先生だけでなくLDに理解がある特別支援コーディネーターやスクールソーシャルワーカー、学年主任の先生などに、娘さんにとって一番いい方法は何かを相談してみてはいかがでしょうか。
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星合 雅彦 先生
岡山大学医学部卒。ほしあい心療内科院長。
児童多機能型事業所「雨上がりの夜空に」で児童・思春期の支援も実施。
DATA
ほしあい心療内科
岡山市北区今2-7-1 2F
TEL.086-250-7367
[診]9:30~12:30 15:00~18:00
※土曜日午後のみ13:00~16:00
往診応需
[休]木曜、日曜、祝日
[P]共有あり
ドンブラっこ 2017年冬号(vol.8)より転載