子育てに困難を感じることが多いといわれる「発達障害」。シリーズ2回目の今回は、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」について、専門の先生にお聞きしました。
ASDとADHD その特徴と対処法
独自の興味とルールを貫き
対人関係に難しさを持つ
自閉症スペクトラム障害(ASD)とは、人と関わるのが苦手で、言葉の遅れや抽象的な概念の理解が困難な傾向が見られる発達障害です。情報の取捨選択ができないため、友達の声も周囲の騒音も同じように聞こえる、目に映るものも部屋の扉と床に落ちたゴミを同じ重要度で受け取ってしまうなどの特徴があります。また、部屋の隅の四角い箱をゴミ箱だと認識するような抽象化も苦手です。
人と同じ共通認識を持ちにくいため、集団に入る際に、困難さを感じます。たとえば、おもちゃの貸し借り、順番を待つ、行動の切り替えなどが難しくなります。行動するとき、自分の興味に従うのか、それとも社会的な要請に応じるのか、人によってその比重には違いがありますが、ASDの子どもは社会的な要請に重きをおくことが難しいため、集団になじみにくいのです。こだわりや独特のマイルールを持つことも多く、鉄道や車や虫などのマニア、収集家になるタイプもいます。
ASDの子どもは、こだわりや独特のマイル―ルを持つことが多く、
鉄道や虫などのマニア、収集家になる人もいる
※写真はイメージ
不注意・多動・衝動性があり、
人間関係を求める
注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、不注意さ、多動などの落ち着きのなさ、衝動性を特徴とする発達障害です。衝動性から、おしゃべりがとまらない、つい手が出るなどの傾向があり、悪気がないのに暴力という形で表現されてしまうこともあります。あちこちに注意が向くため、複数人の会話に集中することが難しく、集団生活では否定されて傷つく体験をしがちです。ADHDとASDは人との関係を求める度合いが大きく違い、ADHDはより強く人間関係を求めます。このため、成長に従って衝動性をコントロールできるようになると集団に適応する可能性も高くなります。
ASDとADHDでは、列に並べないとか、おもちゃの貸し借りができないなど、同じ困り事があっても、内面で起きていることは違います。自分のこだわりがあってルールに従えないASDに対して、ADHDは衝動性が抑えられずルールから外れてしまうからです。この2つを分類するのは難しい上に、両方の傾向が混在している場合もあります。このためASDかADHDかを判定することより、本人が何に困っているのかを理解することが重要になります。
友達とうまく遊べない息子。
どうしたらいい?
息子さんにASD傾向が強ければ、「みんなと一緒に遊ぶことが大切だ」といくら伝えてもうまくいきません。本人がどう感じていて、どんな理屈があれば友達と遊びたいと思うのかをまず探ってみましょう。
ASDといっても、人と共有したい気持ちが全くない例はまれです。自分が好きなことなら遊べたり、大人が入ったり合わせてくれるタイプの子となら遊べたりします。その子が楽しみながら共有体験を積んでいくことは大切です。自分から相手に合わせるのが苦手という特性を理解して、まずはこちらから合わせてあげながら、その子の成長を待つというスタンスでいることが必要になると思います。
ADHD傾向が強ければ、一緒に遊びたいのにうまく遊べずに挫折体験が重なっている可能性があります。衝動性が強くて元気すぎる場合は、無理に枠の中に入れようとするより、その子の元気さが評価される場を用意してあげましょう。暴れん坊だった子が格闘技の場で評価されるなどが良い例です。自分を変えようとしても変えられないのがADHDなので、プラス評価される場を用意しつつ、社会との折り合いをつけられる地点を探していくといいでしょう。
他の子とスピードは違っても子どもはその子なりに必ず成長していきます。困ったらひとりで抱え込まず、発達障害に理解のある医師に一度相談してみてください。
次号では、知的障害と学習障害(LD)について取り上げます。
衝動性が強いADHDの子どもの場合は、
元気さがプラス評価される場を用意してあげよう
※写真はイメージ
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星合 雅彦 先生
岡山大学医学部卒。ほしあい心療内科院長。
児童多機能型事業所「雨上がりの夜空に」で児童・思春期の支援も実施。
DATA
ほしあい心療内科
岡山市北区今2-7-1 2F
TEL.086-250-7367
[診]9:30~12:30 15:00~18:00
※土曜日午後のみ13:00~16:00
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ドンブラっこ 2017年秋号(vol.7)より転載